【盲目の天使】番外編
ものものしい兵士たちが取り囲むカナン城の中で、唯一女性の楽しげな声がする部屋がある。
俺は、一日に一度は、必ずその部屋を訪れるようにしていた。
それは、忙しい主の代わりに配慮するようにとの命令でもあったが、自分の意思でもあった。
なぜなら・・・。
ガッシャ~ン!!
盛大に物が割れる音がして、俺は血相を変えて部屋に飛び込んだ。
・・もしや、王女を取り返そうと、忍び入った賊か?!
剣の柄に手をかけて、目の前にいるはずの賊に向かって剣を構えて。
構えて・・・。
「きゃ~、どうしましょう。
リリティス様のお洋服を濡らしてしまって。申し訳ございません!」
「大丈夫よ、ルシル。また着替えの練習になっていいわ」
王女は、幼い頃から目が見えず、華奢な見た目とは違い、とても忍耐強い方のようだった。
はぁ~。
俺は、頭を抱えた。これが、俺がこの部屋を訪れる、いや、訪れなければならない理由だ。