【盲目の天使】番外編
王女は、どうやら一人で着替える練習をしているらしく、
ひょっとして、それは、ルシルが上手に洋服を着せられないからか?
なんて、俺は内心ひやひやしていた。
カルレイン様--俺の主は、男の中の男って感じで、俺は本当の兄のように、心から尊敬している。
けど、実力主義っていうか、あやまちをおかしたりすると、厳しかったりして。
・・こんなことがカルレイン様の耳に入ったら、俺、殺されるかも。
カルレイン様に見つからないうちにと、無言で片づけを済ませていると、ルシルは床を拭きながら俺に話しかけた。
「あのね、マーズレン。
明日はいよいよノルバス国に向けて出発でしょ?」
俺は、ルシルが今になって、ノルバスに行きたくないとか、家に帰りたいとか言い出すんじゃないかと思って、
眉間にしわを寄せた。
けど、彼女が言ったのは。
「私みたいなドジを、侍女にしてくれて、どうもありがと。
おかげで、家族が飢えずにすむわ。カナンを去る前に、ちゃんとお礼を言っておきたかったの。
・・本当に、ありがとうございます!」