【盲目の天使】番外編


・・ん?女、か?



俺は、幻聴だけでなく、幻視まで見えているのだと思った。

それは、主人が命令した、

“若く健康な女で、長旅に耐えられそうな者”

という条件に合致していそうに見える。


さっさと命令に合う人間を探し出して、主人の役に立ちたいとはいえ、

都合のよい人物像のまぼろしを見るなど、自分がこんなにも神経が細い人間だったとは思いもしなかった。


「もうっ!

今日までに支払えって言ったくせに!」


少女が乱暴に扉を蹴る音が聞こえてきて、俺は、これが幻でないと確信した。



・・助かった~!



俺は少女をおびえさせないよう、馬から下りると、声をかけた。


「あの、突然で申し訳ないんだけど、

侍女になれる女性を探してるんだ。

俺を助けると思って、引き受けてくれないかな?」







< 3 / 90 >

この作品をシェア

pagetop