【盲目の天使】番外編
・・ん?女、か?
俺は、幻聴だけでなく、幻視まで見えているのだと思った。
それは、主人が命令した、
“若く健康な女で、長旅に耐えられそうな者”
という条件に合致していそうに見える。
さっさと命令に合う人間を探し出して、主人の役に立ちたいとはいえ、
都合のよい人物像のまぼろしを見るなど、自分がこんなにも神経が細い人間だったとは思いもしなかった。
「もうっ!
今日までに支払えって言ったくせに!」
少女が乱暴に扉を蹴る音が聞こえてきて、俺は、これが幻でないと確信した。
・・助かった~!
俺は少女をおびえさせないよう、馬から下りると、声をかけた。
「あの、突然で申し訳ないんだけど、
侍女になれる女性を探してるんだ。
俺を助けると思って、引き受けてくれないかな?」