レモン
お父さんが話した後、
家に居た皆がいっせいに泣き出した。

我慢でもしていたかのように・・・。



でも、私の目からは涙が零れなかった。

私はまだ信じられずにいた。



だって・・・
今も、私の目には俊司が映っているんだ。

そして、こうやって目が合っている・・・。



しばらく見つめ合っていると、
俊司は穏やかな顔をした・・・。

映画館で見た時のような笑顔。

その時、私の目から大粒の涙が零れた。




今まで映っていた俊司の姿が、
鏡から消えていたのだった・・・。





そして俊司はただ穏やかな顔をしたまま、
私の瞳からも消えてしまった・・・。





俊司の立っていた場所に、
さっき2人で撮ったプリクラが落ちていた。

そこには確かに俊司が写っていた。






小柄と2人左手の薬指に指輪をして、
とても幸せそうに笑っていた・・・。
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