記憶の破片
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私は心のどこかでまた会えると簡単に思っていた。


『約束』や『運命』という言葉を軽く考えていた。


たった1日見つからなかっただけで、もう見つからないような気になって。


私と沖田さんの出会いが『運命』だとしても。


私と沖田さんのした『約束』が絶対的なものだとしても。


また会える、ということを忘れちゃいけなかった。



「…ありがとうございます」



今度は真っ直ぐにお父さんを見上げた。



「…決めたのか?」



「はい。諦めません。また会うって約束しましたから」



膝の上に置いた拳にグッと力をこめた。



「そうか…」



ふっと微笑んだお父さんはどこかほっしたような表情な気がした。


この広い世界のどこかにいる沖田さん。


早く、会いたい。



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