記憶の破片
.



着いた先はアパートだった。


階段を上る総さんを追いかけて行くと総さんは1番奥の部屋のドアの前に立った。



「あの…」



「俺の部屋」



私が疑問を口にするよりも早く総さんは簡潔に答えた。


ガチャっと音を立てて開いた鍵、ドアノブを回した総さんが私に先に入るよう目線で促す。




「お、お邪魔します」



男の人の1人暮らしの部屋に入るのが初めての私は緊張でいっぱい。


もちろん総さんの態度を見ていれば、密室でふたりきりになったところで甘いひと時なんてないことはわかってる。



それでもやっぱり緊張してしまうのは仕方がない。




「その辺、座ってて」



「はっはい」



淡々とした口調のまま総さんあキッチンに立ち冷蔵庫を覗く。



「飲み物、なにがいい?コーヒー、スポーツ飲料、水、麦茶くらいしかないけど」



「えっと、麦茶で」



コーヒーも炭酸も苦手。


家では緑茶ばかりだし。


お母さんが好きらしくて、オレンジジュースやりんごジュースも常に冷蔵庫に入ってる。



.
< 70 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop