記憶の破片
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3人に流れる沈黙を破ったのは大和さんだった。



「沙江ちゃん、俺は帰った方がいいかな?」



ぽんと頭に置かれた手と声にほっとした。



「はい、大丈夫です。お仕事中なのに時間取ってごめんなさい」



本当は大人の大和さんにいてもらいたい気持ちもあるけど、私が自分でなんとかしなきゃいけないと思った。



「気にしなくていいよ。今日はもう帰るところだったんだから」



にこっと微笑んだ大和さんがふわりと頭を撫でてくれた。



「じゃあ、またね、沙江ちゃん」



「はい。また家に来てくださいね」



微笑みを浮かべたまま大和さんは手を振り、家へ帰っていった。


残された私たちには重い空気が漂っていて、口を開くのも怖いと思うほど。




「…あの」



「来い」



言葉を遮られ、私に背を向けて歩き出した総さんにそれ以上なにも言えるはずもなく、私は言われるがままに総さんの後ろをくっついて行った。


総さん、怒っているの?


怒っていいから、なんでもいいから黙り込まないで。



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