君へのラブソング

「山岸さん、診察室5にお入りください。」

そう看護師に呼ばれ、俺は診察室に入る。

そこには白髪混じりの短い黒髪をした主治医と若い女の看護師がいた。

「最近調子どう?」

穏やかなその声。

「まあまあ、ですかね。」


「そう。バイト増やすって言ってたけど…無理してない?」

先生は心配そうにその太い眉を八の字に下げた。

「はい。無理はしてません。」

「でもストリートライブしてたよね?する時間なくなっちゃうんじゃない?」

「平気っす。今、コンビニとバーテンダーのバイトしてるんすけどその間にライブはしてるんで。」

俺はふと床に置いたギターケースを見た。
中学生の頃、お小遣を貯めて買った相方。

「そう…身体大切にするんだよ。捲ってー。」

そう先生は指示され、俺はシャツの袖を捲った。
注射針が反射しキラリと光る。

チクとしたと思ったら、痛みがちょっとずつ高まる。打つ場所が二の腕だからだろうか。

普通の注射より、痛い。

「はい、お疲れ様。」

先生は優しい笑顔を浮かべる。

「ありがとうございました。」

「また再来週ね!」
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