うちのおネコ様

(4)突然の呼び出し

両親の「夏休み宣言」から、あっという間にその日がやってきた。
私が夏休みに入った次の日だった。
まさかこんな早くに行くとは・・・と思ったが、
サラリーマンの父もよく休みを取れたもんだ。聞くところによるとアメリカの知人とは父と同じ会社の人間でもあるらしい。
仕事に関連付けてうまく旅行にしたのだろう。じゃなきゃ、しがないサラリーマンが
こんなに休みをとれるわけがない。

「じゃ、行ってくるからね美子」
「いってらっさい。お土産はなんでもいいからね」
「いい?ネコちゃん達の面倒ちゃんとみるのよ。予備のお金は奥の部屋の引き出しに
あるから。それとあんたもちゃんとご飯食べて生き延びるのよ。それから・・・」

ああ、もうわかったから。わかったから、そっちも気をつけて行ってきてよと、
無理やり玄関に押しやった。
玄関先には、お見送りとわかってか、ルディとブルーがにゃーにゃーと鳴いていた。
「おお、よちよち。しばらく会えないからなぁ。ごめんなあ。パパ行ってくるよぉ」
そういって二匹のネコの頭をなでた。

「じゃあね、行ってきます。」
母も2匹のネコに挨拶をし、一人娘にも最後にまた渇をいれ、外に出た。

「行ってらっしゃい。」
わりと元気に笑顔で見送ったが、パタンとドアを閉めた後、美子はドアノブを見つめたまま少し淋しそうな顔をした。
足元にはルディとブルーがまとわりついて、美子の顔を見上げていた。


玄関を出ると、家の塀の上には唯一外飼いを許されているハルが座っていた。
「ああ、ハル」ここにいたのね、と両親は最後に顔を見る事が出来た事にほっとした。
「ハル。美子と弟ちゃんたちをよろしくね」
エリは空にむかって手をのばし、ハルの顔や頭をなでた。

「しっかり者のハルがいれば安心だな」パパはわしゃわしゃとなで、
つい抱きかかえようとしたが、ママに「毛だらけになるでしょ」といわれたので
なでただけで別れをいった。


ハルは答えるように目をぱちくりさせ、大きな旅行バックを持った二人の背中を
見えなくなるまで見送った。

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