うちのおネコ様
「ちょ、ちょっとまってよー」

あわてて最後の牛乳を一気に飲み、洗面所に戻る母を追う。
ハルも美子を追ってきた。


「海外って、どこ?なんであたしは一緒じゃないの?」

「アメリカ。お父さんの古い友達がいて、しばらく泊めてもらえるのよ」

「それで、なんであたしは一緒じゃないの!?」

二度も同じ事を聞いた。
すると母は、え?だって・・・といって、美子の足元をすっと指差した。


「ほら、うちには1歳半位になるネコと、1歳前後になるネコが2匹もいるのよ」

ペットのホテル代だって、バカにならないでしょ?といって、笑顔で髪をとかし始めた。


そんな…。せっかくの海外旅行。夏休み。一家団らん。家族旅行じゃないの?すてきなぐーたら生活もできないの?
朝ごはんは誰が作るの?昼は?夜は?
ていうか一人で一ヶ月もいるなんて、今までなかったじゃんか。

あ、姉は!?

「お、お姉ちゃんは!?こっちもどってくるんでしょ」

「さあ。あの子だって仕事があるし、夏休みっていってもお盆に1週間あるかないかでしょ?」
なんというか…4月まで22年間手塩にかけて育てた娘だというのに・・・
就職し、初めての一人暮らしで何かと寂しい思いをしてるだろう。
せめて夏の帰省の時だけでも、家族であたかかく迎えてあげようという気持ちはないんだろうか。

「お姉ちゃん寂しいっていうよ」

「え。でもあの子あっちで彼氏できたんでしょ?」

う…え、ええええっ!!!聞いていない!そんなこと聞いていないよ!!


ていうか考えたこともなかった。
どっちかというと、おっとりとしたマイペースで本読んだりパソコンしたり、わりとインドアな性格だった姉。
かといってファッションにうといわけではなかったが。。。
むしろ私より女らしいか。いやでも、しかし。
うーむ。。。

だからきっと、大丈夫。

そういって、別人(内緒)になった母は「さーてと」といって、うちのネコ達に挨拶をし、「いってきまーす」と声高らかにパートへ向かった。
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