うちのおネコ様
今朝私の布団の中にいた人物はなんだったんだろう。


キャットフードを拒み、牛乳を与え、父の洋服ダンスから服を出し、駅前まで一緒にでかけた。帰りにはお向かいの高田さんにも挨拶をしたし、スーパーで買い物だってした。


スーパーの袋を持ってくれた人。


家までの数分間、私の肩を抱き寄せて帰ってきた人。



その人物の姿はここにない。



変わりに愛らしい赤褐色のナイススタイルのアビシニアン、我が家の「ルディ」が帰ってきた。


彼は今2匹のネコの間で一人(1匹)フローラルな香りを漂わせ、兄弟と共に寄り添い寝ている。


「ルディが、猫に戻った・・・」


今まさに猫の姿なら、ルディの本当の願いや誰に対しての思いがあるのか、聞いても答えられるだろう。
だけど今のルディにはいくら話しかけても、尻尾をパタパタとするだけが、時折変なタイミングで「にゃあー」と鳴くだけだった。


私は今まで猫と会話ができていたと思っていたのに、急に話ができなくなったような気持ちになった。いや違う、人間になったルディと話す事で、明確な言葉での返事を期待するようになってしまったのだ。。



「・・・お休みルディ。・・・今日は楽しかったよ。」

ありがとうといって、私は猫のルディにいつものようにお腹に顔をうずくませた。


・・・人間用のボディーソープの匂いがした。
< 59 / 89 >

この作品をシェア

pagetop