感方恋薬-知られざる月の館-
         ★

「ほほう、成程のう――」


爺は長い髭を弄びながらゆっくりとあたしの部屋を歩き回る。


あたしは、椅子に跨って座ると背もたれに頬杖をつきながら、その様子を目で追った。


「結論から言おう、そやつ、只者では無い。いや、もっと簡単に言えば、そやつは、わしじゃ」


頬づえから顔が、ずりっと、ずりおちた。なに?今、何と言った。宗一郎が爺だって?


「何の冗談よ…」


爺はあたしにくるりと背を向けると、どこか遠くへ視線を走らせ、おもむろにあたしに答えた。


「若かりし頃の話じゃ」
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