感方恋薬-知られざる月の館-
現代科学の常識じゃぁ、月は荒涼とした砂地が広がる天体で建物はおろか、生物の存在自体、無い事は証明されてるんじゃぁ無かったっけ。


「ねぇ、月には何にもないって言うのが、現代科学じゃぁ通説になってるんじゃぁないの?」


あたしの質問に、若様は優しく微笑んだだけだった。


その横顔が凛々しくてステキ…


あたしたちは、最初、ゆっくりと上昇していたが、段々と加速していき、あっという間に地球を飛び出して宇宙空間に出た。


地球は蒼かった。


その地球もみるみる小さくなって行き、月と地球の大きさが逆転して、今度は月の方が大きく見えてくる。


あたしの手を引く若様が、相変わらず優しい笑顔であたしに向かって「もう少しですからね」と告げる。
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