夕暮れ
昇の携帯は
机の下に置かれていた。
昇の好きな音楽を奏でている。


『着信…眞奈』



先輩からの着信だと
かろうじて
確認できた。



俺は
昇の髪を触ったまま
反対の手で
電話を取った。



「はいは~い!」

明るくでてみた。

昇が、慌てた様子で少し動いたけど
頭を押さえ付けた。


「猛ね…。昇は!?」

すごく迷惑そうな声の先輩。


ここは、さらに明るめにいかないとな。

「大当たり~!昇はお風呂だよ~覗く?」


そう言うと
先輩の怒りが流れ込んできた。

無言の怒りが。

怖いので

「覗かない?」

ってもう一度言ってみた。


「裸ならさっきさんざんみたわよ!」

予想外の反撃。

「・・・」

どう返そうか…

ここは…
これしかないよな

「先輩やらし~!」

からかうように
笑いながら言った。



「っと!とにかく!昇があがったら電話してって言ってね!」


「え~!無理だよ!」

「なんでよ!?」


「だってお風呂はいったら、やることあるし」

わざと意地悪を言ってみた。


「え?」

電話の向こうで
固まってる先輩の姿が
容易に想像できた。


俺たちの噂は
知ってるんだな。


疑ってる?


まぁ…今こうして抱き締めてる形になってるけどね。

なんて呑気に考えてたら
昇に頭で思いっきり
押されて
後ろに倒れた

「いって~~!」

昇は
俺の上にまたがって
俺の手に握っていた携帯を取り上げた。


「ごめん!何か用事?」

ちょっと慌ててるのが


少し



ムカついた。




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