MARRIAGEABLE─お年頃─
「見てらんね。」

「・・・・・・」

「お前の辛そうな顔、見てらんねぇ…」

「・・・・・・」

「俺んとこに来いよ。」

相変らず前を見たまま足も止めずにヒロキは呟く。

その声は少し掠れていて、私の胸を締め付けた。

私はヒロキの言葉を受けとめるが、私の口からは喉が詰まったかの様に声は出てくれない。

その変わりに涙が出そうになる。

大きく息を吸い込むと冷たい空気が肺の中へと入ってきて、そのまま見上げるとそこには夜空に輝く星たち。

空高く漂う汚れた空気が星たちを霞ませている。

その薄っすら霞んだ夜空を見上げ、私は涙を飲み込んだ。

今日も私がヒロキに涙を見せる事は無かった。



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