【短編】お願い、ヴァンパイア様
 一つ一つ、丁寧に思い出す。


似合わない薔薇を手にしたとき。

銀色のスプーンを代替品にしたこと。

朝早い目覚まし時計が、本当は腹立たしかった。


 でもそれは、レンに会うための大切な一つだった。


「確かに最初は怖かった……。血を吸われて、このまま死んじゃうのかもしれないって。
だけど、あんなに身をゆだねられたのは、レンだからだったんだよ」


 空はキラキラと星を散りばめて、レンの寂しさみたいに切ない光を放つ。

それをも温めてあげられるようなミーナさんみたく、わたしはなりたい。



「優しくわたしを包んでくれた。丁寧に、わたしに触れてくれた……そんな優しい、レンが……大好き」


 湿気を含んだ夜風がわたしたちを容赦なく吹き抜ける。

じっと視線をそらさないわたしに、レンは乱暴に口を開いた。



「…ざけんな、よ…!俺は、ヴァンパイアなんだよ!!」


 ぽろりぽろりと大粒の涙がレンの頬を伝っていた。

泣き叫んだレンの言葉は、ズキズキと胸に突き刺さる。


 レンが嘆いた、自分のコンプレックス。


「お前だって、俺を置いていくじゃないか!」


 死に急ぐレン―……それは、ミーナさんに会いたくて?

でも、彼女の意思とは反している。


だからレンも余計に戸惑っているのかもしれない。


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