【短編】お願い、ヴァンパイア様
 神崎さんのお屋敷の、広い庭。

申し訳ないんだけど、神崎さんには席を外してもらった。


ただ、何かあれば駆けつけてくれるというので、それはとても心強かった。


 そっと魔術書を広げ、レンの名前を呼ぶ。

すると、闇から溶け出すように黒いローブを纏ったレンが現れた。


 さっきのこともあってなんとなく押し黙ってしまう。

けれど勇気を振り絞って、口を開いた。


「レン、『お願い』が決まったの」

「……ようやく、名前をいう気になったか」


 わたしの言葉に、真紅の瞳を揺らして笑う。

そんな顔を、みたいわけじゃない。


「そう。やっぱりわたしがほしいのは………レンだから」

「お前っ!……何いってるかわかってんのかっ!?」


 むきになって勇み足で寄ってきたレンは、わたしの肩をがっしりと掴んできた。

どんなに揺らされたって、もうわたしのキモチを履き違えたりするもんか。


 キッ、と睨み返して、レンの手を解く。

「わかってる。
でも、同情なんかじゃないよ?哀しそうに『泣くな』って笑うとこ、本当は寂しがり屋で意地っ張りなとこ…」


「……っ!!何、勝手な…」


 レンは、みるみる不機嫌になっていく。

でも、そんなレンも―……


「全部、まとめて好きなの!」


 言い切ったわたしに、レンはぴたりと止まった。

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