満月の銀色ススキ
何事か、と前を覗く。


「あ…」


「着いたね」


視線の先に自分の家の表札を見付けて声を零した。

少し残念そうに、しかし何処か安堵したように。
ススキは望月を見て首を傾けた。


「そうね」


望月は肩を竦める。
会話に夢中になっていた所為か、酷く短かったと感じた。


「…じゃあ、さよなら。あまり夜に外に出ないで。危ないから」


そういって背中を向けたススキに、きょとんと目を瞬かせる。
来た道を戻っていくススキに、はっとした。

送ってくれたのだ。
会ったばかりなのに心配をして。
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