満月の銀色ススキ
音のした方向へ振り返ると、腰をさするススキがいた。
何事かと戸惑っていると、ススキは苦笑した。

陽が出てきて、暑かったから樹の上で涼んでいたらいつの間にか眠っていたらしい。


「落ちちゃった」


呑気に笑うススキに、望月は落ちたという樹を見上げた。

一番近い枝からでも6メートルはある。
そこから無防備に落ちて無傷なのは運がいいとしか言いようがない。


「心配するから、木の上で寝るのは止めてくださいね」


溜息を交えてそう言えば、ススキはじっと望月を見詰めた。


「…な、何?」


視線に気付いた望月が逃げるように躰を引いた。

ススキはお面の奥で目を細めた。


「ありがとう」


「!」


柔らかな声の調子。
低く澄んだススキの声が頭に響く。

優しく微笑まれているような感覚を覚えて、顔が赤くなった。
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