満月の銀色ススキ
流れ続ける雨の音。

望月の家は雨戸が閉められていて、中を窺い見るのは難しい。
諦めもつく条件なのに、足は動かなかった。


「…望月」


ぽつりと、名前が零れた。

顔が、見たかった。

少しでもいい。
話せなくてもいい、から。


「ぇ…うそ、ススキさん…!?」


慌てた声が家の中から聞こえる。

僅かな間が空く。
ほんの少し、雨戸が開いた。

そこから覗いたのは、目を丸く開いた望月。
ススキは無意識に目を緩く細めた。

慌てて外に出ようと身を乗り出した望月を制止する。
望月はその声に一瞬動きを止めた。
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