満月の銀色ススキ


「…風邪引いちゃうよ?」


「アヤカシは人間じゃないから大丈夫。それに、すぐ帰るよ」


心配を浮かべる望月にススキはそう答える。

望月は眉を顰めた。


「…待ってて」


そう言うと、望月は家の中に姿を消す。
やがて、折り畳み傘とタオルを持って現れた。

薄い空色の傘を開いて、望月はススキに歩み寄る。


「…これ、持っていって。私のだから、返すのは何時でもいいから」


ススキを傘の内側に入れ、タオルで髪を拭きながら言った。
ふわりと、微かに晴れた日の花の香りがする。

ススキは大人しく髪を拭かれていた。
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