満月の銀色ススキ
数秒。
数分。

そんな間が広がった。


「…触ると…死んで、しまうから」


漸く聞こえた声音は、消え入りそうなくらい小さく弱々しかった。

望月は目を瞬かせる。

死ぬ、とはどういうことだろうか。
しかも、触れるだけで。


「…それは、貴方が?」


「キミが」


青年は首を左右に振って、短く言った。

新手の拒絶だろうか。
一瞬の間、脳裏をよぎる。

しかし、望月を指した青年の声は短いながら真剣だった。


「…わかりました」


望月は不意に笑顔を浮かべて答えた。
その声に、青年ははっとしたように顔を上げた。
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