謝罪人 Kyouko
車が動き始めた。

「わざわざ、こんな遠い所まで来ていただきまして、ありがとうございます」

中居が、サングラスを外しながら礼を言った。

「でも、わかってほしい。今、あなたの存在が知れたら困るです」

中居には思惑がある。
なるべく、恭子の存在は気付かれずに、謝罪会見の当日まで隠しておきたい。

市長が、謝罪人を雇っていることを知られては困るため、人目をはばかるように恭子を空港へ呼び出した。

「四角市には謝罪会見の当日に行ってもらいます。それまでは、市外のホテルで滞在してもらいます」

「わかりました」
恭子は、中居の支持のままに動くことを条件にして仕事を受けた。

車は、空港と都市をつなぐ橋を渡っている。
車窓から、海が見えて夕日が沈みかけていた。








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