もしも僕に。



あれから30分。
デパートをずっとウロウロしていたが流石に足が痛い。

私は近くのベンチに座っていた。

南桜はいない。

今思ったけど見つけたらなんて話しかけるつもりだったんだろう。

会いに来たって?

まさかね。
バカだ。


しばらくベンチに座ってボーっとしていた。

道を行く人を見ていたのだ。


私が好きな人間観察。

ここを行き交う人は皆、眉間にシワが寄りそうな表情をしている。


涼しそうな顔をしている者は誰1人といなかった。




〜〜〜♪

携帯が鳴った。

【受信メール:一件】

だれ?
…なんだ、サイトか。

携帯の時間を見ると8時を過ぎていた。

「やば…」

私、時間すら忘れてた。

帰ろう……。


席を立った。

「みゆちゃん!」

数秒間反応できなかった。

「みゆちゃん何してんだよ!」

え…私、怒られてる…?

目の前にはこの間とは違うスーツの南桜。

「なんでこんな時間にいんの!」

やっぱり…怒られてる…。

こんな時間って何よ…。
まだ8時過ぎたばっかじゃない…。

南桜に会いたくて来たのに春といい、少し寒かったんだよ?

でも会えるかもって期待捨てないでいたのに…。

そりゃあ私の一方的な思いだよ。


でも、でも…怒ることないじゃない…。


「…っ……」

「え、あ、みゆちゃん?」

「……ひっ…う…」

「ちょ、なんで泣くの?」

なんでって…。

「バ…バカぁぁあ…うわぁぁん…」

なによなによ!バカバカバカ!

「はぁ?」

明らかに困ってる南桜。

当たり前だ。もう、帰ろう…。
会いたいなんて、思うんじゃなかった…。




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