泣き虫Rocker
耳が遠くなったかのように、イチキの声が聞こえなくなる。全神経が麻痺したよう。
薄く膜が張ったように、くぐもって言葉ではなく音として聞こえるイチキの声は、Kについて、興奮気味に語っているのがわかるけど、意味として伝わってこない。
「園田、聞いてんの?」
急にその声だけを捉えて、慌てて聞いてる! と叫んだ。
あまりにも勢いが良かったから、イチキは目をまん丸にして何度も瞬きを繰り返していた。
「変な、園田」
あぁ、もうあたし重症かもしれない。
イチキの声から紡がれるどこにでもある平凡な園田といい名前が特別に聞こえる。
「ああああ、ああ!」
「なんだよ、いきなり」
「Tシャツとタオル! お金払う!」
なんだ、そのことか。いいよ、やる。
軽く笑って、イチキはいらない、と手を振った。
あぁ、その仕草さえまともに見れないとはっ!
大袈裟に、額に手を当てて、くらりと倒れこんでしまいたい。
でも、その前に。
受け取ってもらえないなら、何か役立つことをしたい。イチキのためとは言わず、このさいKishのためでもいい。
「じゃあ、Kishのチケットとか買うよ! 友だちに勧めたりするし、多めにっ」
薄く膜が張ったように、くぐもって言葉ではなく音として聞こえるイチキの声は、Kについて、興奮気味に語っているのがわかるけど、意味として伝わってこない。
「園田、聞いてんの?」
急にその声だけを捉えて、慌てて聞いてる! と叫んだ。
あまりにも勢いが良かったから、イチキは目をまん丸にして何度も瞬きを繰り返していた。
「変な、園田」
あぁ、もうあたし重症かもしれない。
イチキの声から紡がれるどこにでもある平凡な園田といい名前が特別に聞こえる。
「ああああ、ああ!」
「なんだよ、いきなり」
「Tシャツとタオル! お金払う!」
なんだ、そのことか。いいよ、やる。
軽く笑って、イチキはいらない、と手を振った。
あぁ、その仕草さえまともに見れないとはっ!
大袈裟に、額に手を当てて、くらりと倒れこんでしまいたい。
でも、その前に。
受け取ってもらえないなら、何か役立つことをしたい。イチキのためとは言わず、このさいKishのためでもいい。
「じゃあ、Kishのチケットとか買うよ! 友だちに勧めたりするし、多めにっ」