泣き虫Rocker
Kish

200人程度の小さなライヴハウスで今夜ライヴを行うのは、今年メジャーデビューしたばかりのまだまだ無名にも近いバンド。
だけど、今年の夏フェスに出場も決まったし、これからだ、と思う。

チケットを持って、開場までの時間をつぶす。
Tシャツにジーパン、スニーカー。近くのコインロッカーに荷物も全部預けた。持ってるのはチケットと、小さなボディバックのみ。飛び跳ねても大丈夫だ。
1ドリンク制なんで、500円玉もポケットに忍ばせてある。

Tシャツやタオルを買ってライブで着たいと思う、けれどちょっと踏ん切りがつかない。
どうしようか、とライヴハウス前の即席の販売テーブルの前で立ち止まっていたら、またあのよく通る声。

「園田? あれ、奇遇じゃん。なにKishのライヴ?」

「あ、」

グッズにばかり目がいってたけど、その向こうに立つ黄色のKishのTシャツを着た販売員。ライヴハウスの関係者の名札をつけた男。
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