嘘で隠された現実(リアル)
「え?」


突然訪れた驚きに、私は思わず目を開いた。


「音‥外れた?」


周りもそのことに気付いたようだったが、それほど気にした様子もなく、演奏に耳を傾けている。

しかし、私には無理だった。

こんな、誰にでも気付かれてしまうようなミスは、今までに一度もなかった。

しかも、それをしてしまったのは朱月なのだ。

私には、それが信じられなかった。


「どうしたの…?」

小さな声で、思わずそう呟いてしまった。


朱月は、何事もなかったように演奏を続けていた。

しかし、私には判る。

朱月は酷く動揺している。

ミスをしてしまったからだろうかと、始めはそう思ったのだが、それにしては明らかに変だ。

結局、朱月はその後も一般の人だと気付かないようなミスを何度も連発し、演奏を終えた。
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