嘘で隠された現実(リアル)
《Side 朱月》


薄暗い路地に出て、すぐに立ち止まった。

見つめた手のひらは、大きく震えている。

俺はそれを誤魔化すように、両手を強く握り締めた。

そして、固く目を閉じた。


見間違いだ、絶対に。

そう思いたかった。

だが、見間違えるはずがない。

俺が、アイツを見間違えるはずがない…。

どうしてこの場所に居る?

俺に逢いに来たのか?

いや、そんなはずはない。

偶然だ…。


「火月」


決して大きな声ではないのに、それはやけに響いて聞こえた。
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