嘘で隠された現実(リアル)
私は、冷たい空気に触れて完全に冷めたカップを両手で包み、その手に力を込めた。

そうして力を込めていないと、簡単に涙が出てきてしまいそうだったからだ。


完全な拒絶だと感じた。


あの話を思い出したくないと言われただけ、私自身が拒絶されたわけじゃない‥まるで自己暗示をかけるかのように、何度となくその言葉を心の中で繰り返してみたけれど、確実に受けてしまったショックは、そう簡単に消えるものではなかった。


訊くべきではなかった。


言うべきではなかった。


私には大切な思い出なのに、朱月にとっては嫌な思い出なの?

新たに生まれたその疑問は、決して口にすることなどできないだろう。


涙を堪えていたはずなのに、気付けば自然に笑みがこぼれていた。


少し前まで喜んでいたのに、今はショックを受けている。

明らかに朱月に振り回されている自分が、可笑しかった。

そして、それ以上に悔しかった。


些細なことにさえ影響を受けて、情けない、いい加減学習しなければ‥そう冷静に考える自分は確かに存在しているけれど、やはり今は、私の心の殆どが、『悲しい』という感情に支配されているようだ。

それは、どう足掻いてみても、身動きができない程に…。


風が吹き、頬に異様な冷たさを感じた。


そこで初めて、私は笑みを浮かべながら、涙で頬を濡らしている自分に気付いた。
< 65 / 331 >

この作品をシェア

pagetop