嘘で隠された現実(リアル)


静まり返った校舎は、普段の騒がしさが嘘のようで、少し違和感があった。


普段は気にならないような足音さえ、耳に残って離れない。


「天音の忘れ物は教室か?」


「え?あーうん。そうだよ。でも後ででいいや。朱月のギターは練習場に有るんでしょ?なら、付き合ってあげるから、お礼に弾いてよ」


「はぁ?何だよ、それ」

朱月は呆れたように、それでも楽しそうに笑った。

「お礼って‥俺、ついて来てくれなんて、頼んでねぇし」


「いいじゃんか。実はさ、今度の新曲の歌詞、進んでないんだよね…。だから協力してよ」


はぶてたようにそう言えば、朱月は小さな子どもを見るような目をして、私の頭に手を置いた。

たったそれだけのことなのに、顔が熱くなる。

朱月の表情が変わらないところを見ると、赤くはなっていないのだろう。

それが、唯一の救いだった。


「そー言われたら、断れねぇだろ?ったく‥すぐに帰るつもりだったのになぁ…」


「ごめんってば」


「今日は特別だからな。今度は、何か奢れよ?」


「うわー、女の子にたかるわけ?」


「いや、違うぜ?そうじゃなくてこれは、今日だけじゃなく次も聴かせたい‥ってゆー意味の口実」

そう言って、朱月はニヤリと笑った。


一瞬理解ができなかったが、すぐにまた、顔の温度が上がった気がした。


「さ、最低!いつもそんなこと言ってんの!?」


「はぁ?言うかよ。どんだけキザなんだよ、俺は」

そう言って、朱月はまた笑った。

「ちょっとした冗談じゃん」
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