Be impatient
「お疲れ様です。」

私がそう応えた時にはすでにヤナギさんは自分の席に座っていて、机の上に置かれたメモをチェックしていた。

一枚づつ目を通し、それを見ながら電話を掛けたり書類を捲ったり。

そんなヤナギさんの姿をこっそり見ながら、私はキーボードを叩く。

ペラペラと書類を捲る長い指を見て、昨日の事を思い出した。

私の頬を掠めた長い指。

そっと私の髪を払う仕草を思い出し、また胸が早鐘を撞くように高鳴る。

こうなる事が分かっているのだから、見なければ良いのに。

そうは思うが、私は彼の姿を求めてしまう。

例えそれが視界の隅であったとしても、表情が確認出来ないぐらい遠くにいたとしても、私は彼の姿を視界に納めていたい。

目が彼を追ってしまう。

他のものなんて、もう何も目に入らないぐらいに。



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