Be impatient
にっこりと微笑むヤナギさんの目は「嫌いじゃないけど、何?」と問いかけているようで、私はその目から少し横に視線を外した。

「あ、あの…。その、その人の事がどうしても好きなんです。」

別にヤナギさんの事が好きだと言っているわけじゃないのに、なんだか告白でもしてる様な気持ちになり、私の頬は熱を持つ。

緊張している所為なのか急に頭に血が上り、眼球が小さく左右に揺れるようにヤナギさんの姿も小さくブレて見えた。

「その人の事が気になって気になって。自分でもどうしようもないんです。だから、ワタナベさんの事が好きとか嫌いとかそう言った事は考えられないんです。」

冷静さを全く失ってしまった私は、自分でもどうしてこんな事を言っているのか分からなかった。

「仕事に身が入らないぐらい?」

「えっ………」

一層身を乗り出したヤナギさんが手を伸ばす。

その手がそっと私の頬に触れ「どうして泣きそうな顔してるの?」言いながら張り付いていた髪を後ろに流した。

その手に驚いた私はぎゅっと目を閉じてしまう。

あの時の掠める様な掌とは違って、ヤナギさんの掌はしっかりと私の頬に触れていた。



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