恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
土壇場になって、おやっさんと会うのを嫌がる往生際の悪いおにーちゃんを無理矢理引っ張って病院に到着したのは、結局、面会時間終了の10分前だった。
病室に入ると、おやっさんがベッドに横たわり点滴を受けていた。
そしてその傍らには先客――つまり角刈り頭がトレードマークのお寿司屋さんの大将がいた。
コノ“寿司屋の大将”、実はあたしの天敵ともいえる光ものブラザーズ・金太&銀次の父親だったりする。
「おやっさん、ヒデ坊が見舞いにきてくれたぜ」
目を細めた大将が、やさしく語りかけるような感じでおやっさんに声をかける。
「見舞いなもんか。おおかたワシがくたばったかどうか確認しにきただけなんだろうよ」
「そんだけ憎まれぐちたたけりゃ心配ねぇな。ピンク、オレはもう帰るぜ」
「あぁ、帰れ帰れ」
この間、まだ一度も視線を合わせていないおにーちゃんとおやっさん。
おにーちゃんが最後に浅草に帰ってきたのは教育実習のときだったから、会うのはそれから約2年ぶりということになる。