恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~


「久しぶりで実の親子が再会したってぇのに、会った早々これかい? あんたら、もっと素直になろうぜ。おやっさんだって本当はヒデ坊が来てくれてうれしいんだぜ」

「大将、余計なこと言ってねぇで、さっさとテ前ェの店に戻って寿司でも握りやがれ、ってんだ。この時間、店はかき入れどきなんじゃねぇのか」

「店は若いモンに任せてるから心配すんねぇ。それよりヒデ坊からも、おやっさんにやさしい言葉のひとつでもかけてやんなよ」

「そりゃあね、オレだって、おやじが今にも死にそうってカンジに弱ってんなら、そんな言葉もかけてやんねぇわけじゃねぇけどな」


どうやらおにーちゃんの憎まれぐちは、父親であるおやっさん譲りのものみたいだ。


「ヒデ坊よぅ、おやっさんもな、今回の入院がこたえたのか、かなり弱気になっててな、ついさっきまで“早くヒデ坊に帰ってきてもらって、せんべい屋のあとを継いでほしい”って、しきりともらしてたんだぜ」

「余計なこと言うんじゃねぇやっ」

怒ってベッドから起き上がろうとするおやっさんだけど、あたしが「寝てなきゃ、ダメだって」と言ってソレを押さえる。

「す、すまねぇな桃ちゃん、つ、つい興奮しちまって」

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