恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
それだけ言うと、なにごともなかったように歩きはじめるおにーちゃん。

あたしもそのあとに続く。


「あ、そうだ……忘れるところだった……」


5、6歩あるいて声を上げるおにーちゃん。

「え?」

「お前にも声をかけようと思ってたんだが、来週の金曜日の夜、やまぶきちゃんちの寿司屋を貸し切りにして、メリーヒルズの仲間がオレの“送別会”をしてくれることになってんだ。紫苑も出席することになってるから、お前も来いよ」

「送別会?」

「あぁ。オレ、メリーヒルズを辞めて、浅草に帰ってくることになったんだ」

「そっか……やっと、おやっさんの後を継ぐ気になったんだね?」

あたしが訊くと、照れ臭そうな顔をして大きく2、3度うなずくおにーちゃん。

「ピンクには感謝しねぇといけねぇな。ホント、ありがとよ」

「な、なに言い出すの、急に」


“ありがとう”を言われる覚えがまったくない。あたし、なんかしたっけ?

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