恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
「オレさ、右目がダメになって体育の先生になれなくて……おまけにセンタイレッドの役からも降ろされて……ホントはあんとき、スグに浅草に帰りたかったんだよな、実は」
「えっ? そ、そーだったんだ?」
日頃、無理してでも強がって、弱気なところなんて一切見せないおにーちゃんの意外な発言に、あたしはちょっと驚いてしまった。こんなおにーちゃんは見たことがない。
「けどな、おやじと大ゲンカして飛び出しちまった手前、今さらどのツラ下げて、この町に帰ってきたらいいんだろうって、ずっと思ってて……」
「………」
「だから、こないだお前が無理矢理オレをおやじの見舞いに引っ張っていってくれたとき、内心オレ、これで“浅草に帰る理由”ができたってスッゲェ喜んでたんだよな。あんなことでもなきゃ、たぶん一生この町に帰ることはなかったと思う」
「そっか……」
「まぁ、この町に帰ったら帰ったで、しょっちゅうおやじとやりあうことになるんだろうが、まっ、わざわざ遠くからウチのせんべいを買いに来てくれるお馴染みさん達もいることだし、おやじが生きてるうちにせんべいの焼き方でも教わっとこうと思ってな」
「うん、それがいいと思うよ」