恋ジグザグ~“好き”と素直に言えなくて~
とにかくクレイジーなほど“ピンク”が好きで、部屋じゅうピンクの洋服やら小物でひしめきあってるあたしとしては、その制服から目が離せない状態だった。
「あぁ、アレ? 去年、ココの責任者が変わったのをきっかけに、制服も全面リニューアルされたのよ。去年までの制服はありえないくらい超ダッサダサだったけど、今じゃ“萌え萌えキュンキュン♪”って感じだもんね」
「ありゃ、完全な紫苑の趣味だな」
「だってさぁ、ボク、メイドさん大好きだから。でも、お客さんにも評判いいんだよね、“テレビで見たことのあるメイドさんに接客してもらえるなんて”って。誰だって死ぬまでに一度くらいはメイドさんにお世話をしてもらいたいんじゃないかな?」
「えっ、も、もしかしてココのカフェの責任者って、紫苑さんなんですかっ!?」
「そうさ。なにしろ紫苑はメリーヒルズの社長御曹司だからな」
「し、紫苑さんってそんなすごいヒトだったんですかっ!?」
「ボクなんか、別にすごくないよ。自分で努力してそうなったわけじゃなくて、たまたま東京メリーヒルズの社長の子供に生まれてきただけのことだから」
そう言って照れ笑いを浮かべながら、アタマをポリポリとかく紫苑さん。