薔薇の花嫁
悲しむ王に、彼女はゆっくりと近づき、そっと静かに口付けました。

驚く王を前にして、彼女は一筋の涙を零しました。

「私は、花の美しさで人を誘いながらも、人を傷つけてしまう薔薇の棘が好きでした。その騙し、傷つける姿がどこか私と似ていたからかもしれません。けれど貴方にそれは似合いません。だから貴方がもし、私の好きな薔薇を愛してくださるのなら、貴方は人々を魅了するこの花だけを、好きでいてください」

彼女はそう呟き、あの優しい微笑みを浮かべ、消えていきました。

それを見送る王の手には、茎の無い薔薇の花だけが残されていました。
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