流れ星に願いを 〜戦国遊戯2〜
家に戻ってからは、どうしても2人の顔を見ているのも辛くて、幸姫は1人部屋にこもっていた。

部屋に置いてある、大事な自分のウサギのぬいぐるみを抱きかかえて、布団の中にもぐりこんで泣いていた。


「ただいま」

ガチャリとリビングのドアが開く。
玲子が仕事を終えて、家に帰ってきた。

「…幸姫は?」

白い小さな箱をテーブルの上に置きながら、きょろきょろとあたりを見回した。

「それが…」

佐助が玲子に事情を説明する。玲子は少しだけ眉間にしわを寄せ、何かを考え始めていた。

「…なぁ、いっそのこと、幸姫様にもちゃんと本当のことを言ったらどうなんだ?」

佐助の言葉に、玲子と幸村はピクリと眉を動かした。

「だって…かわいそうじゃねーか!今日だって、幸姫様は若のことをパパって呼んだんだ。パパってのは父親って意味なんだろう?幸姫様、どこかで若のこと、自分の父親だってわかって」

「それ以上言わないで!」

玲子が叫ぶ。

「ずっと一緒にいられるのなら、もちろん教えてあげたいし、まっさきに教えるわよ。だけど…もうすぐ分かれなくちゃいけないってわかっていながら、あの子にそんな事、言えるわけないじゃない」

ぎりっとこぶしを握り締める。

「これから先、また会える保障なんてどこにもないのに…言えるわけないでしょ。ゆっきーが父親だなんて…」

そこまで言ったところで、はっとドアが少し開いていることに気づいた。

「…幸姫?」

ドラマや小説のように、幸姫が起きてきて、今の会話を聞いていたんじゃないか。そう思い、恐る恐る声をかけてみた。

『………』

沈黙があたりを包む。


…考えすぎ…かな?


玲子はほっと、胸をなでおろした。
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