流れ星に願いを 〜戦国遊戯2〜
お兄さんに別れを告げると、3人は清水寺の中へと入っていった。

「ゆっきーは知ってる?清水寺」

玲子に聞かれて、幸村は頷いた。

「ああ、お館様から少し聞いたことがある。実際に、来たことはなかったのだか…」

少し進んでは幸村の足が止まり、また、少し進んでは止まった。

「すばらしいな…」

感嘆の声が漏れる。幸村は、目を輝かせながら、しっかりと、周りにあるもの全てを目に焼き付けていった。

なんとなく、そうやってゆっくりと歩く幸村の真似をして、幸姫はあたりをゆっくりと、じっくりと見回しながら歩いてみた。最初のうちは、代わり映えのしない雰囲気に、若干飽きかけていたのだが、何度か繰り返していくうちに、綺麗な色をしたもみじを拾ったりして、少しだけ、こうやって歩くのもいいものだと、感じていた。

「着いた、ここが本堂」

しばらく歩くと、大きな建物が見えてくる。玲子は、その建物を指差して言った。幸姫は、あまりにも大きなその建物に、口をぽかんと開けてみていた。

「ここが本堂か。なるほど…立派なものだ」

幸村も感心したように頷きながら言う。木張りの床をぎぃぎぃと歩きながら先に進むと、少し開けた場所に出る。

「ここが有名な、清水の舞台。清水の舞台から飛び降りるって…ゆっきー聞いたことある?」

玲子に聞かれて、幸村はいや、と首を横にふった。

「しかし、この高さはすごいな。この舞台から飛び降りるなど、よほどのことでもない限りは難しいだろう」

そう呟く幸村に、玲子は笑って答えた。

「そうね、清水の舞台から飛び降りるつもりっていうのは、今ではそのくらい思い切って決断をすること、なんかの意味合いで使われたりしてるもん」

玲子の言葉に、幸村は頷いた。

「そうだろうな。出なければこんなところから飛び降りるなど、常人では考えられん」

ふぅ、と息をつきながら幸村はまた、下を覗き込んだ。
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