流れ星に願いを 〜戦国遊戯2〜
希美が教室に戻ってきた。

「のぞみせんせ」

幸姫が声をかけられ、希美は美香の腕にハンカチをあてて押さえているのに気づいた。

「どうしたの!?」

慌てて駆け寄る希美。が、幸姫はなにも言わず、じっと美香を見た。


わたしは、なにがあったのか、見てなくてわからないもん…


美香は何も言わない。希美が困っていると、ゆうきが口を開いた。

「かおるのやつが、けがさせたんじゃね?」

そう言われて、馨は辛そうな表情を浮かべ、下を向いた。

「みかもはっきり言えよ」

「ゆうきくん」

面倒くさそうに言うゆうきを、幸姫はたしなめるように止めた。

「ゆうきくん、見たの?」

幸姫に聞かれて、ゆうきはうっと言葉につまった。

「み…みてねー」

幸姫がうん、と頷く。

「じゃ、そんなこと、ゆっちゃだめだよ」

幸姫に言われて、ゆうきはごめん、と呟いた。


馨はそのまま、その日は早退をした。希美と馨の母親が、何か言い争っているのが聞こえた。幸姫は、少しだけ不安そうに、馨の方を見た。同情とか、そういったものではなく、ただ、純粋に、どうしてあんなに人に冷たく当たるのか。そして、それをしている馨自身、辛くないのか。そう思っていたからだった。

幸姫の視線に馨は気づくと、顔をしかめて、ぱたぱたっと幸姫に近づいてきた。


「いいこぶっちゃって。このぎぜん者」


馨の言っている意味がよくわからず、幸姫は首を傾げた。馨はふんっと鼻を鳴らして、母親の元へと走って行くと、母親に手を引かれて、そのまま足早に、幼稚園を去っていった。
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