月の雫 -君と歩む彼方への道-
でもな、じいさん。

魔道の修練よりも大事なことってあるんじゃないかな。


少なくとも、オレにとっては。



「じいさん、オレはな、ここをやめたっていいんだ」


つい口に出した思いに。

じいさんはオレはギロリとにらんだ。


「シレン。それは聞き捨てならないな。

ここは国費で運営されているんだ。

それは、この国にとって魔道士が非常に貴重だからだ。

特におまえぐらい素質のある魔道士はさらに貴重だ。

決してお世辞じゃないぞ。


魔道士になれば、おまえは大勢の民の命を救うことになるだろう。


何を考えているのか知らんが、目の前の小さなことにとらわれて、大きなことを見失うなよ」


じいさんは、もう一度悩ましげなため息をついた。
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