月の雫 -君と歩む彼方への道-
両親はレイジュラがいかに優秀か、を周りに吹聴する人たちだった。

いつしか神童と持ち上げられるようになり――


いくら周りにちやほやされても、どういうわけか心はちっとも満たされず、虚しいだけだった。

親が勝手にイメージを作り上げて勝手に愛している「レイジュラ」と、自分とは激しくかけ離れているような気がしていた。




いくら親の要求をかなえても、彼らはちっとも満足することがなかった。

満足の基準が、さらに高くなるだけだった。



こんなことなら、最初からこのくだらないゲームに付き合うべきじゃなかったのに。




いつか、わたしがとんでもない悪事でも起こしたら、親はそのとき初めて気付くんだろうか。


わたしが、自分たちが思っていたような人間では決してないことに。



それは、両親に対する仕返しだ。




自分たちが誇りに思い、完璧な優等生だと勝手に思い込んで周りに自慢してきた息子の真の姿を見て、自分たちの過ちに気付くだろうか。





――それとも、「これはわたしたちの息子ではない」と言うだろうか。
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