月の雫 -君と歩む彼方への道-
(レイジュラ……あんたは、こんな抑圧の中生きてきたんだな)




レイジュラの境遇――裕福な貴族の出――をうらやんでいたこともあったっけ。



オレは町の平凡な商人の息子だし、かつ二番目。

兄貴が優秀だったし、父さんも母さんも、オレのことは特に期待もせず、それはそれは放ったらかしだった。



(人の幸福って、決して見かけの条件では測れないものなんだな)





ものすごいスピードで次々に襲ってくる記憶に圧倒されながらも。


オレの中に、しみじみとした愛情みたいなものが湧き出て。



ふっと、レイジュラとオレの境目がなくなったように感じた。





すべての記憶を共有して。



いまや、この男は、オレ自身だった。
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