月の雫 -君と歩む彼方への道-

2.かすみの中に

「……もう行ってしまったかと思った。

何とか間に合ったようだね」


みるみるうちに丘の頂上に駆け上がると、レイジュラは馬からひらりと身軽に飛び降りた。



「どうしてここへ?」

「やり残したことがあってね」

「……?」


レイジュラは端正な顔に微笑みを浮かべてそう言うと、シルヴァイラに向き直った。


「以前、”死者を甦らせる魔法を使えるか?”とわたしに聞いたことがあったね」

「……」

「どうしてあのときあのように言ったのか、わたしは理解しているつもりだ」

「……なぜ?」


オレは思わず横から聞いていた。



「あのとき――おまえと決闘まがいの騒ぎを起こしたとき……

光る粒みたいなものがいくつかふわふわと飛んできた。

それがわたしの体に入ってきてね。


一瞬にして、シルヴァイラのこれまでの人生のいくつかのシーンを追体験した」


「……ああ」


レイジュラもあの体験をしていたのか。


オレはうなずいた。
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