太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
父さんは静かに、まるで何も無かったように眠っていたけれど涙をこぼしていた。

それは暗い部屋の中で弱々しく光る、小さなビー玉に見えた。


何故、泣くの?

もしかしたらお母さんはもう、私達の元には戻っては来ない?


こうして眼を閉じるだけであの日の父さんは、何度も私の記憶を確かめる様に、忘れさせてはくれない。



私は起き上がって、机の上の年賀状をもう一度手に取った。

先生の宛名の隣には差出人の住所は無い。

私は年賀状を手にしたまま、膝を抱えてその場に座り込んだ。



ワカッテイル。

何故私が急に父さんの事を思い出すのか。


何故もう消してしまいたい希望を持ってしまう?


何故、絶望の淵にあるだろう小さな希望に、私はすがりついてしまうんだろう。


母がいなくなった日から、ずっと、そうだ。

今の今でも、変わらずに、その絶望の希望は私を揺り動かして。


母、ではないのだろうか。

この年賀状は、母が出したのではないのだろうか。



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