太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
「気を付けてな。」

そう言う忠志を残したまま、私は新幹線に乗り込んだ。


福島駅まで約二時間。


私は駅でタクシーを拾い、約三十分でバアちゃんの住む家の前に車を付けた。


周りをグルリと囲む山々は、相も変わらず私をどっしりと向かえ、小さな私を遠くから見据える。

隣の有賀さんの家には、田んぼを二つ越えないと辿りつかない。


その近い様な果てしなく遠い様な距離間も、やっぱり変わらない。



父、バアちゃん、私。

三人の家。


私の部屋だった二階の窓が開いていて、風でカーテンが揺れている。


『カビ臭くなるからよぉ』とバアちゃんは天気の良い日には、よくそうやって窓を開けている、って電話で話してたな。


バアちゃんが飼っていた鶏が、何匹も運動場の様に走り回っていたのを思い出していた。

広い庭の黄色い砂の乾いた臭いが、ゆっくりした風に運ばれツンと鼻をかすめる。



私がその庭を歩き、玄関に入ろうとした時。

「あんだ?おめえ。ミナトかあ?。」


と言うすっとんきょうで、軽やかなバアちゃんの声色が背後から聞こえた。



< 28 / 108 >

この作品をシェア

pagetop