太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
母は隣市の小さなアパートに、共に逃げた男と住んでいた。

バアちゃんは、何故母の居場所を知ってたんだろう。


隣市はバスを三つ乗り継げば行ける。

私達の住む市の隣。

二時間ちょっとの、距離。


私にはこの距離が、身を焼き尽してしまいたい程に辛かった。


遠くない、私から近い場所で母は生きている。

私を捨てても、このたった『二時間』の距離で、私から離れた母。


罪悪間の無い距離間。

もしかしたら、その男と上手く行かなければ。

もしかしたら。

私と父さんの元に、もう一度。


まるで易々と光と闇を保って、穏やかに希望と絶望を垂れ流す様なこの距離ーー。

小学四年の私は、八月の太陽の下を、母に会うためにその二時間を懸命に急いだ。

あの日。

私が目にしたもの。


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