太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
夏なのに、冬物の赤いスカートを履いた私は、滑稽だろうか。

ポケットには去年の冬に使ったマッチが、まだ入ったままだった。


私は何を望んでいた?
母のどんな顔を見たかった?

淋しそうな顔を。
後悔している顔を。
不幸せそうな顔を。


父さんを、私を、捨てた事を。

私に会いたくて、思い出している顔を。


私はそのまま音を立てず、静かに庭を出て、帰り道を歩いた。

母が買ってくれた赤いスカートに、額から大量の汗が落ち、小さな穴の様な染みができる。


駅前のデパート。
母の言葉。

『赤が似合う女性はね、幸せになれるって言われてるのよ』

私に似合う?本当に?
本当に母さんは、そう思って買ってくれたの?

嘘つき。


私は赤いスカートを指で、小さくつまんだ。

ポケットの中で、冬から取り残されたままのマッチが、淋しげな音を立てた。
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