太陽の朝は窓を閉じて【オムニバス】
バアちゃんはそれからも、たわいもない話をするだけで、母の居場所の事については何も話してはくれなかった。


「今年はいつもの年より寒くてな、余計に灯油がいるんだよな。

ストーブをつけっからな。そっちばっかりに使って、風呂の灯油まで回らねえばい。」


バアちゃんはそう言って笑う。


灯油。

私の胸が、キンと音を立てる。

冬の固くて冷たい風の音が、夜の窓を揺らした。



私は寝床に入っても、ずっと眠れずにいた。

灯油。

東北ではまだ、風呂のボイラーには灯油を使う家が多い。


警察がやって来て、玄関先で話をするあの日のバアちゃんの背中を思い出していた。

小4の私は息を飲んで、部屋の中からその背中を見つめていた。

「ミナトは、美智代さんに会いに行ってはいません。

あの子は居場所を知りませんから。」


バアちゃんは怪訝そうに見つめる警察のおじさんに、そう告げた。
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